構文主義
Last-modified: Sun, 10 May 2026 20:47:41 JST (1d)
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概要 
- 伊藤和夫師が考案した、英語を読解するための方法論のこと。
- 英文法を英文和訳の際に利用しやすいよう体系的に再構築し、その知識を使って合理的にひとつひとつの文の構造・骨格を把握していこうとする姿勢である。
- 語学教育分野で言うところの、「文法訳読法」という教授法の一種。
- 駿台英語科では、伊藤師以後、伝統的にこの方法論に依拠して英語を教えている。
- ただし、伊藤師本人は構文主義という言葉を使っていなかった。
特徴 
- 構文主義の方法論を簡単に言うと、「英文の構造を把握し、必要に応じて和訳しながら内容把握しつつ、最終的には(難しい文以外は構文を取らずに)英語を読んで内容がすぐに理解できる『直読直解』が出来るようになることを目指す」というものである。
- 英文の構造を把握することを『構文を取る』、あるいは『構造分析(パーシング、to parse/parsing)』という。
- 今では駿台はもちろん、他予備校や一般の高校でも広く浸透している方法論である。日本の英語教師の大半が当たり前のように構文把握を重視するのは、直接・間接を問わず伊藤師の影響といってよいだろう(いわゆる「伊藤以後」)。
- 構文主義では、「予測と修正」という考え方が重視されている。
- 構文主義と関連が深い概念として、「読解文法」と呼ばれるものがある。
- これは伊藤師や山口俊治師が整備したもので、英文法を英文和訳の際に利用しやすいように体系的に再構築し、「受験生がどう頭を働かせれば、英文の構造を読み解けるのか」を誰でも習得できる形でまとめたものである。
- 伊藤師は返り読みを極力、しなくてもすむような体系を意識していた(「直読直解」を目指していた)。
- 伊藤師は、品詞論を中心に据える従来の学校文法ではなく、文構造を中心とした文法でなければ英文解釈には役立たないと主張した(伊藤、1997)。
- 品詞分解のような読み方は、ある程度は必要悪として認めていた。しかし、英文の原型が分からなくなるほど文を細切りにすることは、返り読みにつながることもあって否定的であった。
駿台における構文主義 
※講師陣/英語科「指導方針」も参照
- 駿台の通期カリキュラムでは、長文の読み方・解き方を学ぶ「英文読解」の授業の他に、構文を使った精読を学ぶ「英語構文」という授業が設置されている。
- もっとも、「英文読解」の授業であっても、「英語構文」と同じく精読ベースの授業をする講師も多い。
- 駿台では構文主義の方法論で英語を精読することを、特に『英文解釈』と言っている。
- 一般の英語教育界では、伊藤師の晩年の時代から、入試問題の超長文化に伴って「英文解釈」という用語は徐々に廃れてきており、現在は「長文読解」と境界線が曖昧な「英文読解」という用語が主流となっている。
- 駿台のカリキュラム的には、講座やテキストの名前に「英文解釈」と書いてあったら、「英語構文」の授業に近いことを読解でやるのだと思っておくとよい。
- 駿台に通っていると非常に勘違いしがちだが、構文主義はあくまでも「英文を精読するための方法論の1つ」である。「精読=構文主義」「精読=英文解釈」ではない。ただし、伊藤和夫師の方法に影響を受けた英語教育が駿台の外でも広く行われるようになったことから、一般に両者は同一視されることも多々ある。
構文主義と多読英語 
- 構文主義に基づく精読、あるいは英文解釈は、しばしば多読(多くの英文を読む訓練をすること)と比較される。
- 多読と「速読」を混同する人もいるが、多読では時間制限を課さずに訓練をすることが多く、必ずしも「速く読む」訓練をする訳ではない。精読も多読も、方法論が異なるだけで最終的には「速読」を目指すこと自体は変わらない。
- 精読と多読はどちらも必要なメソッドであり、受験英語に限らず、英語の能力を伸ばすには両方ともを一定のレベル以上に行えることが重要である。これは、現在の英語教育界ではほぼ常識となっている。
- しかし、「精読・多読のどちらにどれほど重点を置いて訓練すべきか」というバランスについては様々な考え方があり、よく議論になる。また、精読重視派・多読重視派が互いの方針を批判し合うことも多い。
- 日本の英語教育界は批判合戦が盛んな業界ということもあり、双方の主張ともにある程度差し引いて評価する必要はある。
- 特に1990年代以降、大学入試英語では長文全体の内容理解・高速処理に焦点を当てた出題が一般的になった。2010-20年代にはこの傾向がさらに加速し、以前であれば「超長文」と呼ばれた語数の文章が多くの大学で出題されるようになってきている。
これを背景として、一文一文の構造分析による精読よりも多読による量への慣れを重視すべき、という意見がある。また、精読ベースの駿台の英語教育では、そのような出題には対応しにくいとも言われる。- 精読重視派の反論として、以下のような意見がある。
- 多読重視派の批判として、以下のような意見がある。
- 駿台英語科の中にはただ全文和訳をしていくだけの講師もいるので、実質的に「難しい部分だけ構文を取る」という方針が機能していない。
- 精読で『直読直解』を実現するのはあくまでも理想論であり、精読を極めることで長文を高速に読めるようにするのは不可能ではないにしても、遠回りすぎる。「構文を読解に活かせない」というが、そんな事態になっていることこそ遠回りの証であり、最初から精読とは切り離した訓練も積む方がずっと上達が早い。
- 「とにかく数多くの英文を読んでいない人が「速く」読める訳もありません。高等学校の教科書を1冊読んでもせいぜい200ページくらいです。これでは英文を読む足腰を鍛えることなど無理でしょう。」(竹岡広信師)
- 近年になって駿台にも多読講義が追加され始めており(高1多読英語)、これは駿台英語科自身も精読だけでは限界があることを認識している証左である。
- その他、駿台の英文解釈に対する批判として以下のようなものがある。
- 逆に、精読派から多読派に対しては「文法知識をないがしろにして言語能力が身につくはずがない」「一つの文をきちんと読めないのにどうやって長い文を読むのか」という批判がされることもある。
- 多読派の反論として以下のようなものがある。
- 学習者は文法・語法の知識なしに文章を読むことなどできないので、多読でも文法知識を学習しながら訓練することが重要である。「多読では文法を重視しない」「多読は何も考えず多く読むだけ」というイメージは誤解にすぎない。
- 文章の量と難易度を徐々にステップアップさせながら、「一つの文を『直読直解』すること」を繰り返して、文章全体を母語に近い速度で読めることを目指すのが多読である。「多読では一つの文が読めない」というのは誤解で、むしろ多読によって精読の力も鍛えることができる。
- 多読派の反論として以下のようなものがある。
- 精読派の牙城ともいえる駿台英語科でも、「読解の足腰となる精読を積み上げる必要があるが、ある程度習熟した後は多読に移行したほうが良い」とする立場の講師は多い。
- 大島保彦師は「精読と速読、どっちもそこそこできる人が結局一番良い点数を取るんだよね」「すべて構文を取るやり方からは"離陸"しなければならない。普段は構文を気にしないようにし、読みづらい、難しいところは構文を意識するのが正しい構文の使い方」などとおっしゃっている。
- とはいえ、そのような立場の講師であっても「多読は上級者になってから」というスタンスの場合がほとんどで、やはり精読を重視していることには変わりはない。
- なお、最近の大島師は高1多読英語を担当している。時間のある高1のうちなら初級レベルから多読しても効果は見込めるということだろうか。
- 関西駿台では竹岡広信師が精読の偏重に批判的な見解を取り、多読を推奨している。師の英語教育観はオリジナル講座『英文読解特講(発展編PartⅠ・Ⅱ)』のテキスト前書きに詳しい。
英語教育史における構文主義 
- 伊藤師以後、様々な予備校講師が構文主義を批判・継承し、独自のメソッドを発表するようになった(藤村、2021)。
- 日本の英語教育界では「英語構文」という言葉が複数の意味で用いられており、混同に注意が必要。
- 駿台では、英文の文構造(construction/sentence structure)そのものを指して「英語構文」と呼んでいる。
- 駿台以外では、単に「構文」と言った場合、"クジラ構文"・"so-that構文"・"It-that構文"などといった、熟語的な特殊構文・特定の定型表現のことを指すことが多い。実態としては「英文公式(formula)」という言葉が近い。
- 「熟語的な特殊構文とその和訳を公式化する」という発想は、元々伊藤師以前の時代から行われていた方法で、漢文の句形(句法)を模していた。
- 谷・西村(2006)は、「伊藤以前」の、山崎貞『新々英文解釈研究』(研究社)に代表される「熟語 - 公式派」のことを「『構文』主義」と呼んでおり、非常に紛らわしいことになっている。
参考文献 
- 入不二基義(1997).「二つの頂点―『英文解釈教室』と『ビジュアル英文解釈』―
」, 『現代英語教育』34(2), pp.12-17, 1997-05, 研究社. - 谷明信・西村公正(2006).「いわゆる受験英語「構文」・「公式」の系譜:『難問分類英文詳解』と『新々英文解釈研究』(9訂版)の「構文」比較」, 『実技教育研究』20, pp.19-26, 2006-03, 兵庫教育大学実技教育研究指導センター.
- 山口俊治(1997).「私の見た伊藤和夫氏の業績」, 『現代英語教育』34(2), pp.10-11, 1997, 研究社.
- 伊藤和夫(1997).『予備校の英語』(研究社出版、1997)
- 藤村達也(2019).「伊藤和夫の『受験英語』教育における『教養主義』:『構文主義』との関係から」, 日本英語教育史学会事務局編『日本英語教育史研究』第34号, p.136, 2019-05, 日本英語教育史学会.
- 藤村達也(2021).「「受験英語」における英文解釈法の歴史的展開 ―伊藤和夫の「構文主義」を中心に―」, 『京都大学大学院教育学研究科紀要』第67号, pp.15-28, 2021-03.
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