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構文主義
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*概要 [#x2d6be0c] -伊藤和夫師が考案した、英語を読解するための方法論のこと。 --英文法を英文和訳の際に利用しやすいよう体系的に再構築し、その知識を使って合理的にひとつひとつの文の構造・骨格を把握していこうとする姿勢である。 --語学教育分野で言うところの、「文法訳読法」という教授法の一種。 -駿台英語科では、伊藤師以後、伝統的にこの方法論に依拠して英語を教えている。 -ただし、伊藤師本人は構文主義という言葉を使っていなかった。
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//[[伊藤和夫]]師の記事にあった節・項を独立させました(過去の版で削除されていた)。 *概要 [#x2d6be0c] -伊藤和夫師が考案した、英語を読解するための方法論のこと。 --英文法を英文和訳の際に利用しやすいよう体系的に再構築し、その知識を使って合理的にひとつひとつの文の構造・骨格を把握していこうとする姿勢である。 --語学教育分野で言うところの、「文法訳読法」という教授法の一種。 -駿台英語科では、伊藤師以後、伝統的にこの方法論に依拠して英語を教えている。 -ただし、伊藤師本人は構文主義という言葉を使っていなかった。 *特徴 [#l462a1b3] -構文主義の方法論を簡単に言うと、「英文の構造を把握し、必要に応じて和訳しながら内容把握しつつ、最終的には(難しい文以外は構文を取らずに)英語を読んで内容がすぐに理解できる『直読直解』が出来るようになることを目指す」というものである。 --英文の構造を把握することを『構文を取る』、あるいは『構造分析(パーシング、to parse/parsing)』という。 -今では駿台はもちろん、他予備校や一般の高校でも広く浸透している方法論である。日本の英語教師の大半が当たり前のように構文把握を重視するのは、直接・間接を問わず伊藤師の影響といってよいだろう(いわゆる「''伊藤以後''」)。 -構文主義では、「''予測と修正''」という考え方が重視されている。 --具体的に言うと、文頭に前置詞があったら後続の文はどうなるか予測をたてる、実際によみすすめるうちに予測にあわないことがあったら修正する、といった考え方である。 --夏期講習の「英語構文特講」のテキストを読むと、駿台英語科が今でもこの考え方を大事にしているのがわかる。 --ただし、伊藤師自身はこの予測という問題に対して、少なくとも文型論においては明確な言及をしていない。しかし、「読みはじめた時から、文の構造についてある予想を立て、文が形の上で自分の予想通りに進行してゆくか、予想を裏切った展開になるかを確認してゆく作業が大切だ」(藤村、2019)と、ほとんど定義とも言えることは述べている。 -構文主義と関連が深い概念として、「''読解文法''」と呼ばれるものがある。 --これは伊藤師や山口俊治師が整備したもので、英文法を英文和訳の際に利用しやすいように体系的に再構築し、「受験生がどう頭を働かせれば、英文の構造を読み解けるのか」を誰でも習得できる形でまとめたものである。 --伊藤師は返り読みを極力、しなくてもすむような体系を意識していた(「直読直解」を目指していた)。 --伊藤師は、品詞論を中心に据える従来の学校文法ではなく、文構造を中心とした文法でなければ英文解釈には役立たないと主張した(伊藤、1997)。 ---品詞分解のような読み方は、ある程度は必要悪として認めていた。しかし、英文の原型が分からなくなるほど文を細切りにすることは、返り読みにつながることもあって否定的であった。 **駿台における構文主義 [#b9949522] ※[[講師陣/英語科「指導方針」>講師陣/英語科#shidou]]も参照 -駿台英語科は、伊藤師以後、伝統的にこの方法論に依拠して英語を教えている。 --近年の入試問題の変化(処理速度の重視・リスニング/スピーキングの重視など)に伴い、必ずしも構文に依拠しない多様な授業が展開されるようになってきているが、それでも構文・文法による精読を基本姿勢とする講師がほとんどである。 --このため、受験生や英語教育者の間では「駿台の英語=構文」というイメージが根強く、構文主義の英語を勉強したいがために駿台に通う受験生も少なくない。 --逆に、訳読重視の方針が合わないと感じる受験生の場合、駿台の英語を避けることもある。 -駿台の通期カリキュラムでは、長文の読み方・解き方を学ぶ「英文読解」の授業の他に、構文を使った精読を学ぶ「英語構文」という授業が設置されている。 --もっとも、「英文読解」の授業であっても、「英語構文」と同じく精読ベースの授業をする講師も多い。 -駿台では構文主義の方法論で英語を精読することを、特に『英文解釈』と言っている。 --一般の英語教育界では、伊藤師の晩年の時代から、入試問題の超長文化に伴って「英文解釈」という用語は徐々に廃れてきており、現在は「長文読解」と境界線が曖昧な「英文読解」という用語が主流となっている。 --駿台のカリキュラム的には、講座やテキストの名前に「英文解釈」と書いてあったら、「英語構文」の授業に近いことを読解でやるのだと思っておくとよい。 --駿台に通っていると非常に勘違いしがちだが、構文主義はあくまでも「英文を精読するための方法論の1つ」である。「精読=構文主義」「精読=英文解釈」ではない。ただし、伊藤和夫師の方法に影響を受けた英語教育が駿台の外でも広く行われるようになったことから、一般に両者は同一視されることも多々ある。 **構文主義と多読英語 [#zd71178c] // 講師陣/英語科「指導方針」から記述を移しました。 -構文主義に基づく精読、あるいは英文解釈は、しばしば多読(多くの英文を読む訓練をすること)と比較される。 --多読と「速読」を混同する人もいるが、多読では時間制限を課さずに訓練をすることが多く、必ずしも「速く読む」訓練をする訳ではない。精読も多読も、方法論が異なるだけで最終的には「速読」を目指すこと自体は変わらない。 -精読と多読はどちらも必要なメソッドであり、受験英語に限らず、英語の能力を伸ばすには両方ともを一定のレベル以上に行えることが重要である。これは、現在の英語教育界ではほぼ常識となっている。 --伊藤和夫師本人も、学生時代は多読によって英語を学んだことを述懐している(伊藤、1997)。しかし当時は多読教材も多読の方法論も未整備だったため、多読は必ずしも現実的な学習法ではなかった。その反省として生まれたのが「構文主義」であった(藤村、2021)。 -しかし、「精読・多読のどちらにどれほど重点を置いて訓練すべきか」というバランスについては様々な考え方があり、よく議論になる。また、精読重視派・多読重視派が互いの方針を批判し合うことも多い。 --日本の英語教育界は批判合戦が盛んな業界ということもあり、双方の主張ともにある程度差し引いて評価する必要はある。 -特に1990年代以降、大学入試英語では長文全体の内容理解・高速処理に焦点を当てた出題が一般的になった。2010-20年代にはこの傾向がさらに加速し、以前であれば「超長文」と呼ばれた語数の文章が多くの大学で出題されるようになってきている。 これを背景として、一文一文の構造分析による精読よりも多読による量への慣れを重視すべき、という意見がある。また、精読ベースの駿台の英語教育では、そのような出題には対応しにくいとも言われる。 --精読重視派の反論として、以下のような意見がある。 ---そもそも構文主義は全てを和訳するわけではなく、難しい部分でのみ構文を取って考えるという手法であり、速読と反するものではない。 ---伊藤師の『直読直解』という言葉に現れているように、構文主義では返り読みをせずに済むように訓練することで読解スピードを向上させるのを目標としている。駿台の英語自体が長文対策に弱いわけではなく、単に学習者が構文を読解に活かせていないというだけである。 --多読重視派の批判として、以下のような意見がある。 ---駿台英語科の中にはただ全文和訳をしていくだけの講師もいるので、実質的に「難しい部分だけ構文を取る」という方針が機能していない。 ---精読で『直読直解』を実現するのはあくまでも理想論であり、精読を極めることで長文を高速に読めるようにするのは不可能ではないにしても、遠回りすぎる。「構文を読解に活かせない」というが、そんな事態になっていることこそ遠回りの証であり、最初から精読とは切り離した訓練も積む方がずっと上達が早い。 ---「とにかく数多くの英文を読んでいない人が「速く」読める訳もありません。高等学校の教科書を1冊読んでもせいぜい200ページくらいです。これでは英文を読む足腰を鍛えることなど無理でしょう。」(竹岡広信師) ---近年になって駿台にも多読講義が追加され始めており([[高1多読英語]])、これは駿台英語科自身も精読だけでは限界があることを認識している証左である。 -その他、駿台の英文解釈に対する批判として以下のようなものがある。 --多読による英語教育で有名な[[SEG]]英語科は、「([[SEG]]は)文法も精読も否定しませんが、構文を解析して、日本語での思考を介在させながら英文を理解するという方法は、内容を理解する速度が遅すぎて実用にならない」と批判している((https://www.seg.co.jp/tadoku/reference/itou-kazuo.htm))。 ---原文を見るとわかるが、SEGは精読や文法の重要性そのものを否定しているわけではなく、あくまで精読偏重や伊藤和夫師の英語教育論を批判している。 --駒橋輝圭師によると、英文解釈ベースの英語教育を受けた生徒は、意味内容の把握よりも日本語に訳すこと自体を目的にしてしまいがちで、日本語に頼らないと英語が読めない癖が付きやすいという。さらにはリスニングやスピーキングが全くできないという状態にもなりやすい((駒橋輝圭, 「シンポジウム 今後の英語教育のあり方:各外部試験の特徴と指導内容の方向転換の提案」, 『駿台教育フォーラム』第30号, 2015.))。 ---精読派の反論としては「伊藤師の著作を読めばわかるように、構文主義は日本語を介在させて読むというものではなく、文法的な見方を重んじるというものであるので、見当違いである」とする声もある。 ---ただ、伊藤師の理念とは関係なく、学生が誤解して日本語で読む癖をつけてしまうリスクがあるのは否定できない事実である。 -逆に、精読派から多読派に対しては「文法知識をないがしろにして言語能力が身につくはずがない」「一つの文をきちんと読めないのにどうやって長い文を読むのか」という批判がされることもある。 --多読派の反論として以下のようなものがある。 ---学習者は文法・語法の知識なしに文章を読むことなどできないので、多読でも文法知識を学習しながら訓練することが重要である。「多読では文法を重視しない」「多読は何も考えず多く読むだけ」というイメージは誤解にすぎない。 ---文章の量と難易度を徐々にステップアップさせながら、「一つの文を『直読直解』すること」を繰り返して、文章全体を母語に近い速度で読めることを目指すのが多読である。「多読では一つの文が読めない」というのは誤解で、むしろ多読によって精読の力も鍛えることができる。 -精読派の牙城ともいえる駿台英語科でも、「読解の足腰となる精読を積み上げる必要があるが、ある程度習熟した後は多読に移行したほうが良い」とする立場の講師は多い。 --大島保彦師は「精読と速読、どっちもそこそこできる人が結局一番良い点数を取るんだよね」「すべて構文を取るやり方からは"離陸"しなければならない。普段は構文を気にしないようにし、読みづらい、難しいところは構文を意識するのが正しい構文の使い方」などとおっしゃっている。 --とはいえ、そのような立場の講師であっても「多読は上級者になってから」というスタンスの場合がほとんどで、やはり精読を重視していることには変わりはない。 ---なお、最近の大島師は高1多読英語を担当している。時間のある高1のうちなら初級レベルから多読しても効果は見込めるということだろうか。 --関西駿台では竹岡広信師が精読の偏重に批判的な見解を取り、多読を推奨している。師の英語教育観はオリジナル講座『[[英文読解特講(発展編PartⅠ・Ⅱ)]]』のテキスト前書きに詳しい。 *英語教育史における構文主義 [#d7e161fc] -伊藤師以後、様々な予備校講師が構文主義を批判・継承し、独自のメソッドを発表するようになった(藤村、2021)。 --藤村(2021)が代表例として挙げる中の一部だけでも、富田一彦氏の「読解100の原則」、薬袋善郎師の「F.o.R.」、太庸吉師の「表現リレー」、[[表三郎>駿台大阪校wiki:表三郎]]師の「ポスト構文主義」、今井宏師のパラグラフリーディングなど、非常に多数に及ぶ。 --関西駿台にファンの多い表師の「ポスト構文主義」は、伊藤師の構文主義を肯定しつつも、内容や表現の把握不足・構文の過度な重視・パラグラフリーディングの欠如を批判し、それらを修正することを狙っていた。 ---もっとも名前からも分かるように、ポスト構文主義においても構文の重要性そのものは前提とされている。 -日本の英語教育界では「英語構文」という言葉が複数の意味で用いられており、混同に注意が必要。 --駿台では、英文の文構造(construction/sentence structure)そのものを指して「英語構文」と呼んでいる。 --駿台以外では、単に「構文」と言った場合、"クジラ構文"・"so-that構文"・"It-that構文"などといった、熟語的な特殊構文・特定の定型表現のことを指すことが多い。実態としては「英文公式(formula)」という言葉が近い。 --「熟語的な特殊構文とその和訳を公式化する」という発想は、元々伊藤師以前の時代から行われていた方法で、漢文の句形(句法)を模していた。 --谷・西村(2006)は、「伊藤以前」の、山崎貞『新々英文解釈研究』(研究社)に代表される「熟語 - 公式派」のことを「『構文』主義」と呼んでおり、非常に紛らわしいことになっている。 -受験英語の文脈においては、「''伊藤以前''」の受験英語教育における訳読法と対比して論じられることがある。 --「伊藤以前」の訳読法とは、場当たり的に英熟語や英文公式(formula)の知識を用いて和訳していくやり方で、[[入不二>入不二基義]](1997)はこれを「''熟語 - 公式派''」と呼んでいる。 --[[山口>山口俊治]](1997)によれば、伊藤師と山口師は英文読解の基盤を構築する共同作業の中で、それまで品詞論と熟語的な表現が根幹をなしていた英文解釈法を改め、文構造の体系的な提示による一貫性のある方法を確立していった。伊藤師は、英語の文構造の分析と解明をしていく上で、Sweet, Jespersen, Poutsma, Curmeなどの専門書に当たっていた(山口、1997)。 *参考文献 [#k847394b] -入不二基義(1997).「[[二つの頂点―『英文解釈教室』と『ビジュアル英文解釈』―>http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/879.html]]」, 『現代英語教育』34(2), pp.12-17, 1997-05, 研究社. -谷明信・西村公正(2006).「いわゆる受験英語「構文」・「公式」の系譜:『難問分類英文詳解』と『新々英文解釈研究』(9訂版)の「構文」比較」, 『実技教育研究』20, pp.19-26, 2006-03, 兵庫教育大学実技教育研究指導センター. -山口俊治(1997).「私の見た伊藤和夫氏の業績」, 『現代英語教育』34(2), pp.10-11, 1997, 研究社. -伊藤和夫(1997).『予備校の英語』(研究社出版、1997) -藤村達也(2019).「伊藤和夫の『受験英語』教育における『教養主義』:『構文主義』との関係から」, 日本英語教育史学会事務局編『日本英語教育史研究』第34号, p.136, 2019-05, 日本英語教育史学会. -藤村達也(2021).「「受験英語」における英文解釈法の歴史的展開 ―伊藤和夫の「構文主義」を中心に―」, 『京都大学大学院教育学研究科紀要』第67号, pp.15-28, 2021-03.
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