英文解釈教室

Last-modified: Mon, 13 Mar 2023 21:44:02 JST (400d)
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英文解釈教室(えいぶんかいしゃくきょうしつ)は、伊藤和夫の代表的な学習参考書。研究社刊。

概要 Edit

  • 伊藤和夫師の代表作で、1977年に出版された。
  • 師の山手英学院時代の幻の名著『新英文解釈体系』(有隣堂、1964年)*1の実質的改訂版である。

特徴 Edit

  • 伊藤和夫三種の神器」同様、かつての英語科の指定副教材(テキストに参照頁が載っていた)で、現在でも構文のテキストと親和性が高い。
  • 体系的かつ網羅的ではあるが、本書の発売当時に隆盛だった『新々英文解釈研究』(研究社)などには載っているようないわゆる知識を要するような熟語 - 公式的な構文は載っていないものがある。*2
    • 伊藤師がそれらの知識は当然の前提としており、また『新々英文解釈研究』をライバル視していたために差別化をはかったものと思われる。
    • 受験勉強の初期の段階から本書に絞ると穴ができる。
  • 1980年代から1990年代前半にかけては、東大・京大受験生の定番書であった。
    • 1980年代に「(北海道大学)合格者のほぼ全員が『英文解釈教室』を使っていた」*3という類の本である。
  • 現代でこの本を受験対策としてこなすことが良いことなのかは、意見が分かれるところである。
    • 本書は精読時の構文把握のやり方を示したものであり、速読が重視される傾向のある現在の受験英語の対策にそのまま適用するのは困難である。
    • この本をしっかり仕上げると原書を読めるだけの力がつく、今でも東大の上位合格者には愛用していたとの声が多い、と評する人もいる一方で、現在の受験生が使うには高度すぎる・オーバーワークだとする人もいる。
    • 東京大学の伝統的な4番の英文和訳問題が1997年度より4Bになり軽量化され、さらに最後の砦であった京都大学が2016年度に傾向を変え、(小倉弘著『京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄(エッセンス)』(プレイス、2016年)に収録されているような)重厚な出題がなくなってからは、役目を終えた本とも言われている。
      • 一部では「化石」とまで評する声まである。
      • しかし多読主義者として有名な竹岡師が本書を推薦したことがあった。伊藤師への尊敬故であろうか。
    • ビジュアル英文解釈よりかなり難しい難解な著作のため、無理にこの本に手を出さずともよいだろう。
  • 発行当時から「英文法を過度に体系化しすぎている」という批判もある。伊藤師もこれを認めていたようで、ビジュアル英文解釈はその反省から書かれたものであるという。
  • 伊藤和夫師がこれを出版しようとした当初、予備校講師のノウハウが外部に流出すると出版に反対する意見もあったそうだが、予備校の拡大成長戦略として予備校講師の著作物を出すのは有効であるとして論破したという。*4
  • 2017年に新装版が出版された。
  • 高橋善昭師による、独自に取り組む場合に効果的な(挫折しない)方法は以下の通り。
    ①1回目は例題を飛ばして、解説を熟読し、短文の和訳を作り、全体を前期のうちに終わらせる。
    ②2回目は短文を飛ばして、解説を熟読し、例題の全訳を作る。
    ③3回目は全体を通読する。
    ※いずれの段階でも、間違った箇所にマークをしておき、完璧になるまで攻める。
  • なお、師の晩年の時代から、入試問題の超長文化に伴い、「英文解釈」という用語(科目名?)は徐々に廃れて、現在は「長文読解」と境界線が曖昧な「英文読解」という用語が主流となっている。
    • 駿台のテキスト的には、「英文解釈」は「英語構文」に近い。
    • 参考までに代表的な類書のタイトルを挙げると、『英文解釈の技術100』(桐原書店、1991年)、『ポレポレ英文読解プロセス50』(代々木ライブラリー、1993年)、『英文読解の透視図』(研究社、1994年)、『富田の英文読解100の原則』(大和書房、1994年)である。
    • 久保田智大師の新刊(2020年9月発売)、『大学入試 英文解釈クラシック―論理を捉えて内容をつかむ』(研究社)は、「『英文解釈教室』の系譜を受け継ぐ」ことを自負しているだけあって、「英文解釈」である。
  • 現在でも、越前敏弥氏、北村一真氏、比較的若い世代では久保田智大師などの著作に強い影響を与えている。

シリーズ Edit

参考文献 Edit

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*1 初版4,000部で絶版
*2 『私の大学合格参考書作戦'90』(エール出版社、1988年)
*3 七帝柔道記より
*4 入不二基義(1997)