東大入試詳解シリーズ

Last-modified: Wed, 21 Feb 2024 08:45:07 JST (57d)
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東大入試詳解シリーズは、駿台文庫が出版する東京大学入試(前期日程)の科目別過去問題集である。



 

概要 Edit

特徴 Edit

  • 年度版書籍ではない。
    • 2018年3月2日に初版が発売。
    • 2020年3月5日~26日に第2版が発売された(「物理・下」は除く)。
    • 2023年11月1日以降(化学は2023年12月中)に第3版を発売予定(「物理・下」は除く)。
  • 2023-1999年度の25年分(第3版)を収録(「物理・上」・リスニングを除く)。
    • 物理は上下巻を合わせると、なんと44年分にも達する。物理は下巻(1999-1980)の影響も有り、第2版を包含する形で24年分(2023-2000)となる。
    • 英語リスニングは第2版と同様に、20年分(2023-2004)の収録である。またこの版より、青本と同様に音声DL方式となる。
  • 地学の発売はない。
  • 過年度青本の内容を再収録した科目と新たに書き下ろされた科目とがある。
    • 後述の通り、化学世界史過年度青本の再編集ではなく新たな書き下ろしで、当シリーズとは別物の単行本と考えた方がよい。
  • 赤本青本駿台生に限らず、全東大受験生の必需品になるだろう。
  • 本体価格は全て2,600円。つまり税込で2,860円である(第3版)。
    • 赤本の25ヵ年シリーズ(最近の2021年まで収録)より高くなった。
  • サイズ(第3版)は今まで通り物理のみB5判、他はA5判である。
  • 構成は、「赤本」は主に出題単元別あるいは大問別で構成されているのに対し、「青本」は一貫して年度別で構成されている。
    • セット演習の重要性を考えると、科目によってはそれだけで赤本の上位互換確定である

科目別 Edit

英語 Edit

  • 編集チームは、大島保彦勝田耕史斎藤資晴佐山竹彦武富直人廣田睦美増田悟
  • 誤植が多いので注意。
  • 読解分野では要約解答の明らかな誤答を含めて、ミスが多く見受けられる。
  • 作文分野は好評価を得ている。
    • 批判魔の竹岡師は、読解部分はしばしば批判するものの、作文部分は非常に高く評価している。
  • 赤本竹岡広信師の『東大の英語27カ年 第10版 (赤本)』)ともひろに競合している。
    • 批判合戦にならないことを願いたい。
    • 両方買うか、あるいは友人と赤青別々に購入して、中身を自分で比較してもよい。
      • 赤本の正答率は非常に参考になる反面、解答プロセスの解説では青本に軍配が上がるようだ。
    • 問題の配列は、赤本が大問別、青本が年度別。

英語リスニング Edit

  • 赤本と比べると発音は綺麗。(本番の教室ガチャの存在をお忘れなく)
  • 収録年数の点ではかつては赤本に負けてしまっていた。
  • 赤本で権利上省略されている年度/問題も収録されている。
    • 第2版では2000~2019年の20年分になっており、ディスクが1枚増えて3枚になり、赤本との収録年数の差を埋めた。
  • 本番はこれの1.3倍程度のスピードで読まれる上に、発音がハッキリしていない箇所がそこそこある。徐々に聞き取れるスピードを上げていくとよい。模試の過去問よりも速いので、そこまで対策してようやく土俵に立てるといった感じである。
    • 音質を悪くする方法としては、スピーカーに接続して音が出る周辺をタオルなどで何重にも覆う、わざと音源に音割れ加工を施す(本番はどちらかというと発音が不明瞭で場合によっては子音すら判別しがたいといった感じなので、聞きにくさのベクトルとしては異なるが)、風呂場で音源を再生する(音がかなり反響するという点で、本番に近い)、くらいだろう。特に音が反響する場所での演習は必須である。まずは身の回りで使えそうな場所を探そう。駅やデパートでのアナウンスのような音質を再現でき、かつ少なくとも30分はある程度以上静かな時間があることが条件である。
      • 合格者平均点は毎年20点はあるし、英語の1/4の配点を占めるだけでなく、数学理科社会の30点と同じ30点なので、これを本気で対策しない手は無いだろう。
      • なお、東大入試での席順は完全に五十音順なので、大教室で最初や最後の方以外の席に当たるとほぼ確定で浪人しても同じ教室で受けることになる。よって、「現役時は運が悪かったけど浪人すれば大丈夫やろ!w」といった甘ったれた考えは一切通用しない。自分と少なくとも苗字の2文字目までが近い、同じ科類志望の東大受験生が周りにいるなら、どんな教室で受けたか聞いてみるとよい。
  • 各種東大模試過去問などの模擬問題集も購入して取り組むとよい。(内容を忘れているならば、受けた模試の復習も可)

数学(文科) Edit

  • 過年度青本の解説がそのまま再掲されている。
  • 冒頭の対策についての文章は、雲幸一郎師執筆のもの。
  • 明らかに赤本よりオススメである。赤本は問題を分野別に分類してしまっており、初見で問題を解くことを考えるとためにならないうえに、青本と同じ値段だからである。青本赤本の完全上位互換といえる。
  • 競合相手とその特徴は以下の通りである。
    • 東大数学で1点でも多く取る方法(文系編)
      • 問題は文理別(参考問題として理科も収録)。赤本青本より掲載年数が少ない(15年分)。泥臭い方法でもいいのでとにかく点を稼ぐことに焦点を当てている。ぶっちゃけ解説はそこまで丁寧ではない。
    • 東大文系数学 系統と分析
      • 文系理系で分かれている。一部赤本青本にない年度の過去問を含む(鉄緑会40ヶ年や大数50ヶ年を買うなら、ほぼカバーできる)。理科のみで出題された問題でも教育的なものは文系のものにも掲載している。解答の目標時間が設定されており、参考になる。また、見開きに収まるように作られている。

数学(理科) Edit

  • 過年度青本の解説がそのまま再掲されている。
  • 冒頭の対策についての文章は、小林隆章師執筆のもの。
  • 赤本と比べると解答のセンスが良い。
  • 競合相手が最も多い科目である。競合相手とその特徴は以下の通りである。
  • 東大理系数学 系統と分析
    • 文系理系で分かれている。一部赤本青本にない年度の過去問を含む(鉄緑会40ヶ年や大数50ヶ年を買うなら、ほぼカバーできる)。文科・理科(さらには理科一類・後期日程)でのみ出題された問題でも教育的なものは理系のものにも掲載している。解答の目標時間が設定されており、参考になる。また、見開きに収まるように作られている。
  • 東大数学プレミアム
    • 教学社で杉山義明(よしあき)先生が「京大数学プレミアム」を執筆されているのに対して同じく駿台関西地区の米村明芳(あきよし)先生が編著されたもの(まさに京大は「よしあき」・東大は「あきよし」が執筆)。
    • 米村明芳先生にとっては初の単独著作の市販本である(「ハイレベル数学(Ⅰ~Ⅲ)の完全攻略 」は、杉山義明先生と共著)。
    • 1971年~1992年の東大の入試数学の問題から、理系の受験生にとって重要なテーマを抜粋。
    • 収録問題数は、理科理科一類・後期日程の1題を含む)63題・文科3題の66題からなる。裏表紙の文言そして収録問題数の内訳からも主に理系受験者を対象にした書籍と言えよう。

現代文 Edit

  • 過年度青本の解説がそのまま再掲されている。
  • 各所からの批判が多い。
    • 駿台内からも強く批判する講師が多数いる。
  • 本文の読解は普通だが、解答の作り方が微妙という関東駿台の特徴を体現している。
  • 冒頭の対策についての文章は、稲垣伸二師の書き下ろしで、吉本隆明の表出論を引用するなど独自の理論が展開されている。
  • 駿台内外からボロクソに批判されている。
    • 赤本並みもしくはそれ以上に酷い内容である。
  • ちなみに、赤本の方の著者も元関西駿台の桑原聡師である。
  • 上述の通り過去問集の解答が酷いので、そもそも現代文をきちんと対策するくらいなら、英語で85点以上を狙うなり古典を素早く終わらせるなりした方がよい。上級現代文などで実力をつけておいて、現代文の対策は模試を受けた際に時間配分を身体に叩き込むだけにしておくのも1つの作戦として有用である。というか第一に、他の科目の方が科目の性質上リターンをより見込めるのも事実である。
    • 収録は、文理共通(第1問)9題と文科専用(第4問)6題の15題(例題12題・補題2題・参考問題1題)からなる。
    • 収録年度は最近では2020年、最古で1960年代まで遡る。ちなみに内野博之師の著書ライジング現代文も多くの問題が東大からの出典であるがこの東大現代文プレミアムとの重複はほぼない。
    • とりわけ量よりも質の方が重要な科目だけに東大現代文対策をするならば、これ1冊をしっかりとやりこなすことも一方法かもしれない。
    • 遂に東大現代文も参考書で対策できるようになる時代が訪れるのだろうか?

古典 Edit

  • 古文の解答・解説は上野一孝関谷浩
  • 漢文の解答・解説は三宅崇広土屋裕(監修)。
  • 赤本(なお著者は関西駿台の講師)は批判の対象(特に古文が)になっているので、これか、これより圧倒的に優れた鉄緑会のものを買うとよいだろう。
    • 鉄緑会のものは10年分しか載っていないが、メルカリなどで10年前のものを買う猛者もいたりする。なお、採点基準は厳しめにつけられており、文章を読み進める部分の解説は1行1行非常に丁寧である。採点例もあり、自己採点を行いやすい。古典で採点基準を自分で考えている暇などないし、迷ったらこれをオススメする。かなり値は張るが、それだけの価値はある。
      • 鉄緑会のものは、2006年度用のものが初版。鉄緑会でやるなら、20年分遡れれば十分だろう。逆に、10年分だけでは少し心許ない。数学のように30ヶ年が出ることが望まれる

物理(上・下) Edit

  • 坂間勇森下寛之
    • 唯一B5判で上下の2冊発刊の科目である(第3版についても継続)。第3版(「上」のみ)からは「下」を上回り24年(2023-2000)に増えた。
    • 以後は、「上」のみ改版されて「下」は改版がないまま、引き続き販売される見込み。
    • 基本的に過年度青本の解説がそのまま再掲されているが、解説の薄いところやミスは森下師によって適宜、加筆修正されている(本人談)。
    • 冒頭の対策についての文章は書き下ろし。
      小倉師のテキストにあるような問題図一覧が掲載されている。
  • 高井隼人師がTwitterで褒めていらっしゃった。
  • 解説で微積物理を使いまくるので注意。これが嫌なら、鉄緑会のものを買うとよい(科類別目標点、配点付き)。だが逆に微積物理を使うなら青本の方が良いという声もある。自分のやり方に合うものを選ぼう。

化学 Edit

  • 大川忠
  • 物理坂間勇師とは違い、過年度青本三國均師の解説は再掲されていない。
  • やはり、赤本鉄緑会過去問集と競合関係にある。が、鉄緑会のものは初版が2014年度用であり、古い問題もやりたければ青本を買うことになる。ただし鉄緑会のものにはセレクション問題として、直近10年分以外にも問題が5年分以上は載っている。
    • 赤本はセット演習しにくい構造になっているうえに解説も大して丁寧ではなく、化学は演習量も非常に重要な科目であることも相俟って、真っ先に選択肢から外れるだろう。過年度青本や下記の鉄緑会のものに比べればこちらも心底丁寧な解説ではないかもしれない
    • 鉄緑会のものでは大問別(I・II別)に難易度が記されており、科類別目標点も書いてある。非常に詳細な解説がなされているので、独学しやすい。また、配点が記されているので、「この手の問題には○点割り振られているから〜」と、問題構造を分析して戦略を立てるのにも非常に役立つ。特に戦略を考えるとなると、必須である。
    • 2021年度第3問の出題ミスの指摘もしてくれているため、やはり鉄緑会のものは手に入れておくべきだろう。
    • 出題ミスに関してはこちらも参照のこと→
      https://youtu.be/MXBTQpQ9UBQ?si=VlNnueyLwPU3e2MX

生物 Edit

  • 競合する赤本は、大森徹師ではなく、他予備校の大森先生なので要注意。
  • 入試詳解シリーズでは唯一、生物だけが(京大入試詳解・生物も同様)解答解説集が別冊子となっている(問題が本冊子に掲載)。

日本史 Edit

世界史 Edit

  • 解答解説の執筆者は、鵜飼恵太、金子隆、寺師貴憲廣木俊昭茂木誠渡辺幹雄
  • 現行の教科書に即して解答解説を全部書き換えている。
    • 実際、2002年の問題の解説に、現在(原稿を執筆している2017年)という記述があることからもこのことを窺える。
    • 特にイスラーム史は近年の学説の発展が目覚ましく、教科書の内容も大きく変わっている。
    • 渡辺師は書き換えをしない赤本駿台日本史科を批判していた。
  • 解説には、その問題の関連事項や教科書から掘り下げた深い部分までがしっかり網羅されており、必ずしも知っておく必要はないものの理解の助けとなる箇所が多い。また、「これとこれは逆の関係」「次にこの考え方が復活するのはこの頃」などと、タテとヨコの網を張っている部分もあり、学習効率も良くなる。
    • 情報量が厖大なので、マーカーを使って、ここだけ分かれば大丈夫 ということが一目で分かるようにするのも一つの手ではある。
  • テーマ別東大世界史論述問題集(1989~2016)との重複有無は、第一問は概ね重複、第二問は殆ど重複なしである。テーマ別の方では、第三問を扱っていない。
    • よって、第3問も解きたいならこちらがオススメ。
    • が、あちらにしか載っていないテーマがあるのも事実ではある。また、本番に会場に持ち込むならあちらの方がコンパクトで便利である。
  • 過年度青本大岡俊明師の解説は再掲されていない。
    • このことに関して関西駿台世界史科元主任の中谷臣師はボロクソに批判している。それどころか、自身のサイトで誤りを大量に指摘していらっしゃる。買った人は是非一読を。

地理 Edit

  • 阿部恵伯 監著。
  • 問題の統計はその当時のままだが、阿部師の「地理は生きている」という考えから、解説には当時の青本の解説を転記するだけではなく、その統計の最新版を掲載し、それについての説明を追加してあり、25年分研究する価値のあるように編集されている。

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