英語長文読解教室
Last-modified: Sun, 12 Mar 2023 05:01:38 JST (403d)
Top > 英語長文読解教室
概要
- 伊藤和夫師の代表的著作の一つ。研究社刊。長年絶版だったが2004年に復刻した。
- かつては後継の「テーマ別英文読解教室」と合わせて名著と言われていた。
- しかし中身が1989年の発刊から一度も改訂されていないことや、超長文化した昨今の入試問題にはそぐわない古の問題集と化してしまっていることにより、伊藤師の他の著作と比べると現在ではそれほど人気ではないかもしれない。
- その一方で伊藤師の教室三部作の最終巻らしい格調高さと共に、ただの問題演習を超えた濃密な読解体験をもたらす、まさに名文揃いの本書を推薦する人は少なくない。参考までに大島保彦師と西きょうじ氏の推薦文を載せる。
- 『読むことによって「知識を増やす」だけでなく「自分を変える」参考書。源泉を、ここに、今、もう一度。』(大島師)
- 『思考なき時代に...英文を読むことは単なる情報獲得の手段ではなく、その行為自体がひとつの思考となりうることを示してくれる著作です。ゆっくり取り組んでみてください。』(西氏)
特徴
- 役割を端的に言えば、英文解釈教室で説かれた方法の実践演習の量を確保し、英文解釈教室と原書をつなげることである。
- とりわけ、共通一次試験導入以降進んだ長文化と大意要約問題の対策を視野にいれている。
- もちろんこれは1983年当時の話なので今の受験生がこのことを期待して手に取るのは少しお門違い?
- また、受験生に向けて適宜改変がなされた入試問題の英文は原書の一歩手前の段階に触れるものとして非常に良い塩梅であるため、本来なら使い捨ての名文を正しく内容理解することがもう一つの目的。これが今でも色褪せない魅力なのである。
- 伊藤師曰く「入試問題へのレクイエム」
- 伊藤師によれば教室三部作を「戦中派風に」位置付けてみると、「英文法教室は基本の戦略概論、英文解釈教室は戦略プラス戦術論、英語長文読解教室は個々の戦闘詳報とそこから得られた教訓のまとめ」ということらしい。
- とりわけ、共通一次試験導入以降進んだ長文化と大意要約問題の対策を視野にいれている。
- 内容はテーマ別に20章に分かれており、55題収録されている。
- 一つ一つの文の長さは短い。基本的には300語程度だろうか。
- 一度も改訂されていないこともあり、レイアウトが恐ろしく見にくい。醜いレベルである。
- 大島師による改訂が待たれる...
- 読解に相当の比重が置かれているので、解説も今の問題集に比べるとだいぶ不親切であろう。伊藤師自ら「文法と構文に関する事項の説明は体系的になっておらず、構文研究まで含めて重要事項が常に説明されるという原則は守られていない」と大々的に注を施している。
- 巻末に収録されている『私の訳出法』は伊藤和夫屈指の名文とも言われ、受験生に限らず参考になる。一読の価値有り。
- 駿台フォーラム創刊号に掲載された『私の翻訳術覚書』の増補加筆。
- 総じて英語が得意かつ余力のある人向けと言えるかもしれない。今日の入試問題を鑑みても伊藤師の位置付けを踏まえても無理にやるメリットは無いし、逆に焦って目を滑らせてしまっては本書の味わい深さが何も感じられないだろう。
- 寺田寅彦は随筆集『柿の種』に「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」と添えたが、今や本書もそうした扱いが適切なのかもしれない。
- 二次試験を終えてからの執行猶予期間、大学が始まるまでの準備期間に触れても十分その意義を持つだろう。多浪を決めた人は前期や夏期にやると新鮮さが保たれるはず。
ーー
Amazon