山本義隆

Last-modified: Sat, 30 Dec 2023 11:50:44 JST (112d)
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山本義隆(やまもと よしたか)は、元駿台予備学校物理科講師。科学史家。元東大闘争全学共闘会議代表。

経歴 Edit

  • 1941年12月12日生まれ。
  • 大阪府出身。
  • 大阪市立船場中学校卒業。
  • 大阪府立大手前高等学校卒業。
  • 1964年、東京大学理学部物理学科卒業。
  • 東京大学大学院博士課程中退。
  • 1970(?)年、駿台高等予備校~予備学校物理科専任講師。
  • 23年度通期授業を以て引退。
    • 今年度(23年度)を以て退職なさるとのこと(本人談、後述)。

授業 Edit

  • 科学史の話などを交え、微積分を駆使するまさに駿台らしいアカデミックでハイレベルな講義で、長年の間、特に東大や東工大など最難関大受験生を魅了しつづけている。
    • 授業時に法則などで人名が出てきた際その人について掘り下げて色々なことを話してくださったりする。(例えばフックの法則に際し彼の様々な功績を紹介した時には、その翌週に一つの例としてフックのノミのスケッチをプリントで配布されることもあった。)
    • 受験物理を磨き抜かれた平易な言葉で誤魔化すことなく解説することにかけて、師の右に出るものはいない。その希有な能力は授業はもちろんのこと「新・物理入門」等の著書に惜しみなく注ぎ込まれている。一部の受講生にのみ受け入れられるマニアックなものではなく、大学合格を目的とした予備校ならではの平易明快なもので基礎的な数学力とやる気さえあれば必ず収穫のある授業である。
    • その著書「新・物理入門」は受講者必携の名著。駿台生の物理の教科書と言ってもいい。まるで師が紙面から語りかけて来るようで、授業の理解が増す。
  • 板書は丁寧に書いてくれる。
    • 古くから教鞭をとっておりなんとなく白チョーク一本のシンプルな板書と思われるかもしれないが、意外にも数色のチョークを使いカラフルな板書をなさる。
    • 基本的に解説パートと解答パートに分けて板書なさる。色チョークを使ったり丁寧になさる。
      • 人によっては、数理処理の部分や問題の解答では板書の日本語が少々ぶっきらぼうだと感じる点もあるかもしれないが、簡潔で良いと感じる生徒もいる。いずれにせよ口頭では丁寧に解説してくださるので、適宜メモを取るとよい。
    • また字が独特で、特にvとVが判別しづらかったり、“=”が“–”にみえたり、“v1”が“u”に見えたりもするが、あとで質問にいけば教えてくれる。(新物理入門問題演習の記述演習の模範回答は非常に綺麗だが代筆してある物のようだ)
    • ただ、加齢によるせいもあるのだが、板書ミスや作成担当をしている教材の校正ミスが多い(ただ、大体はその場で訂正される)。 最前列の人は、気付いたら遠慮なく言ってあげよう。 師も「最近の学生は冷たい。」と嘆いている。
    • ちなみに、折れて落ちたチョークは度々踏まれ粉砕されている。また、落とした黒板消しは(必要がない限り)拾わない。
  • 物理数学ではなく自然科学であることを念頭に置いて、物理的な現象の見方を身に付けるための授業を展開する。
    • 師曰く「ニュートンの法則なんか証明できない。どこから来たのかというとニュートンの頭の中から出てきた。天才の霊感というほかはない。」
    • 「こんな説明すると、長岡君から、またええ加減な数学教えてと言われるかもしれないけど、物理数学ほど厳密でなくていい。」というスタンスであった。
    • 数式や公式は物理の道具でしかなく、本質はbehavior(物理的なもののふるまい)を正しく考察することだと説く。
    • 問題を解いたときには答えがbehaviorに合致するか吟味することを強調する。
      • この際、公式的にしか分かっていない生徒が陥りがちな誤りなどを例にあげることがある。この例が大変身近でありながら本質を説く現象ばかりで、非常に秀逸。
    • 記述式の試験では上記のような物理的な理解が問われているため、師の教える考え方を身に付ければ難しい問題でも合格点をとることができる。
      • 「記述式っていうのんは、答えがあってなくても考え方が合ってれば点をあげますよ~ってことなんだよ?」
  • 物理に道具として使う数学のことを「算数」と呼ぶことがある。フーリエ展開など高級なものであっても「大人の算数」とおっしゃる。これは物理において使われる限りはあくまで計算手段だという意図であろう。
    • ちなみに森下師は物理こそが本来の科学としての数学で純粋数学は傍流だと批判することがあるが、これも根底には科学は自然ありきの学問だという同じような思想があるからだろう。森下師と同じく物性物理専攻の小倉師もこの考え方に近い。
    • なお、故坂間師のように物理の中でも理論よりの分野を専門にする講師は、数学的な見方を重視するなど若干姿勢が異なる。
      • 坂間師存命の頃白衣を着て教壇に上がる坂間師を山本師が「理論屋の癖に」と揶揄することもあったという。
  • ごくまれに、時間に余裕がある時、雑談をすることもあった。
    • 師が大学生だった頃の話をすることもあり、雑談の中でビックネームが出てくることもある。
      • 「小柴先生がさ~、知ってるでしょ、あのノーベル賞取った小柴先生、あの人が海外出張から帰ってきた最初の授業で・・・」

担当講座 Edit

 駿台初期には数学も教えていたらしい。

  • 新宿校があった頃、年度によっては新宿校の東工大コースの物理SⅠ教材を担当したこともある。
  • 物理SPart1」の幾何光学における解説で師の描く金魚の絵はある種のイベントになりつつある。毎年一度しか見ることができないので写真を撮る者も。(三宅唯師や果てには教職員もこぞって撮りに来るほど。)

通期

  • 2018年度まで季節講習も担当していたが、体調を崩されたことを契機に通期のみとなった。
  • 2019年度高卒クラスパンフレットに、名前と顔写真・メッセージが例年通り掲載されていることが確認された。
    • ただし、お茶の水3号館SAへの出講はなくなった。
  • 2020年度~はお茶の水2号館のみに出講していらっしゃる。季節講習は担当していない。
  • 2023年度もお茶の水2号館SEのみ担当。*1
  • 2023年の夏以降持病の悪化で、教壇に立つのが厳しくなりつつあり、体力の低下もあって、23年度の後期授業を最後に駿台を退職なさるとのこと。
    • 駿台物理科の象徴であり、駿台内外問わず多くの生徒に記憶される師の引退には非常に名残惜しいものがある。

通期 Edit

 例年、お茶の水3号館東大理系コースと市谷校舎医系コースに出講していた。
 かつては京都校大阪校にもレギュラー(通期)で出講していた。

  • 教材不明 1977?年度

講習 Edit

春期講習 Edit

夏期講習 Edit

  • 物理基本演習(夏期講習
    • お茶の水校
      • 山本義隆師が教材を編集していた。坂間勇師が教材を編集した「物理」よりもレベルは下になっていたが、難関大でも対応できる問題(物理学の基本であって、問題自体は簡単ではなかった)が載っていた。

冬期講習 Edit

直前講習 Edit

特設単科講座 Edit

衛星単科(サテネット21) Edit

  • 物理 基礎から完成まで 1995年度
  • 楽しくて面白くて、役に立つ物理 1996年度

高校生クラス Edit

人物 Edit

  • 物理学者(素粒子論)。科学史家。科学哲学者。革命家。
  • 予備校講師としては、駿台物理科の象徴で権威的存在。いわゆる駿台物理科の重鎮にしてレジェンド。
    まさに生ける伝説である。駿台において師の名前を知らない者はほぼいないだろう。
    • 師の授業を受けた生徒は、自然と尊敬の念を師に抱いてしまう。そんな人物である。
    • かつて、物理科東西合同教授会で揉めた時、師の鶴の一声で争い?が治まったことがある(森下寛之師の項参照)。
    • 坂間勇師らと共に現在の駿台物理科の礎を築いた人物であり、受験業界の顔とも言える。
      • 両雄並び称されていた両師ではあるが、山本師の駿台採用の際の面接官が坂間師で、山本師は坂間師が何を言っているのかわからなかったらしい。
      • 共著である『必修物理』執筆の際も衝突があったらしく、「『必修物理』とか言う訳のわからん本を書いた時も……。あの人の美学はようわからん。」と講義中にこぼされていた。
    • 鹿野俊之師や星本悦司師、三宅唯師など、現在駿台で教鞭をとる講師陣が浪人時代から教鞭を執っているので、現在の駿台は親子三世代同居状態にある。
      • 三宅唯師に至っては、教授会の時に山本師のサイン会を開くべきだと主張するくらい心酔している。
      • 余談だが、「物理SPart1」の幾何光学における解説で師の描く金魚の絵はある種のイベントになりつつある。毎年一度しか見ることができないので写真を撮る者も。(三宅唯師や果てには教職員もこぞって撮りに来るほど。)
    • 元関西物理科No.2の中田俊司師が尊敬する存在である。
      論述問題についても「山本さんの文章は本当に素晴らしい。」と言い、絶賛している
    • 同じスーパー京大理系コースのSEクラスを持っている現代文科の二戸宏羲師も「あのひとほんとにいい文章書くんだよ。」とおっしゃる。
    • 師への賛辞は物理科どころか理系に留まらない。福井紳一師、山口紹師、秋本吉徳師、久山道彦師、二戸宏羲師、佐山竹彦師、田部圭史郎師、沼尻正師など数多くの文系教科の講師にも影響を与えている。
    • 若き日に大槻義彦師の代講をしたことがあり、その時の受講生の中にSEGの小島寛之氏がいた。
      • その時、講義前に廊下で煙草を吸っていて、多浪生と思われていた。
    • ベテラン講師の大島師、山口紹師を呼び捨てで呼べる数少ない講師であり、それだけ大ベテランということである。また両氏とも山本師を賞賛している。
  • 元東京大学全学共闘会議議長としても著名である。
    • 日大全共闘議長の秋田明大氏とともに、全共闘の象徴的存在であった。
    • Wikipediaにしっかりとした記事が書いてあるほど、世間でもよく知られている。
    • 実際は、党派別の内紛で、「政治オンチ」で党派色のない師が「消去法で議長にさせられた」。*2
    • 全共闘議長としての山本師については右記のページを参照のこと→wikipediaの山本師のページ
      • 山本師が湯川秀樹の弟子であったというような話はメディアによってつくられた虚像であると師ご自身が著作に書いてある。(実際は一年間程、京大の湯川秀樹教授の研究室にいただけらしい)*3山本師のページを編集しようとする人に注意を促したい。
      • 師が若い頃学生運動に携わったことなどが原因となり駿台に来たという話は禁句なのかと思いきや、かなり色々な先生が頻繁に話題にする。
      • 駿台日本史のテキストには(たとえセンター向けでも)、確実に試験にはでないが氏の名前はしっかりと書かれている。そして大概講師はそのことに触れる。(興味がある人は、日本史の授業(特に戦後)にもぐるといい。信者の田部氏は確実。)
    • なお、東大安田講堂事件当時に奥井潔師が東大文学部部長であり山本師に捕らえられたというのはガセネタである。
    • 3号館講師室で学生に扮した某出版社の記者に東大闘争のことを聞かれ、馬鹿デカイ声で「出ていけ」と怒鳴りつけ、力ずくで追い出してたこともあった。東大闘争は師の中では「脛のキズ(失敗に終わったため)」になっている様子であるため、このネタはご法度である。絶対にこの話をしないこと。
      • 最近は講演で語ることもある。
  • 日本を代表する評論家・科学史家でもある。
    • 主に物理に関わる科学史の著作・翻訳を岩波書店やみすず書房など権威ある出版社から多数上梓している。執筆した分野は解析力学、熱力学、天文学、原子物理学と多岐にわたる。
      • 特に『磁力と重力の発見』は第30回大佛次郎賞、第1回パピルス賞、第57回毎日出版文化賞を受賞しており、新聞などの書評でも盛んに論じられた。
      • 2017年現在、日本数学協会の機関誌『数学文化』において「小数と対数の発見」という連載を持っている。師の研究はとうとう数学にも及んだ訳である。
    • 大学生向けの参考書も手がけており、ものによっては大学院生レベルでなんとか読めるというとんでもない難易度である。
    • 秋本吉徳師曰く最近は明月記の記述から過去の超新星大爆発を研究していたりするとか。
    • 英作文科の重鎮である山口紹師はベトナムで公演をするためにスピーチ分を英訳してくれと頼まれたそう。「まあ引き受けましたよ。あの人にはいくら感謝しても感謝しきれないことがありますからね」
    • 2018年度第一回東大入試実戦模試国語第一問の筆者である。
      • 出題されたのは同年1月に出版された『近代日本一五〇年』。
        解答解説の筆者紹介では、大学院中退の科学史家となっており、在学中のことや駿台物理科の講師である旨は書かれていなかった。
      • 理系の物理選択者にしてみると二教科に師が絡んでいることに。
      • 「普通あんなの出します?畏れ多すぎますよ」(内野師談)
    • 2020年2月6日実施の上智大学外国語学部英語学科の国語①(現代文)の試験において師の著作「重力と力学的世界」からの抜粋文章が出題された。
  • 関西人。適度な大阪訛がとても心地よい。
    • 関西出身なためか、阪神タイガースの大ファン(小林俊昭師談)。
    • 共にSEクラスをもっている秋本吉徳氏曰く、同じ関西人ということで授業進行表なるものに阪神の試合結果を書きあっているらしい。
    • 受験生への激励の色紙に「阪神頑張れ」と書いて教務から書き直してくださいと懇願されたとか(大島師談)。
    • 出身である大手前高校には、新物理入門、新物理入門問題演習の2冊ずつを、70期生の3年時に理系6クラスに1セットずつ寄贈された事があった。
  • ファッションは一貫されているようで、毎週常に色のこけたデニムシャツに年季のある革ベルト、履き潰されたジーンズにレッドウィングのブーツという出で立ちである。遠目でも一目でわかる。
    • 師の影響は服装にまで及ぶのか、物理科の講師の多くが同じくジーンズにタックアウトしたワイシャツという出で立ちである。
  • 頭脳明晰だが、偉ぶらずとても優しい人格者である。(駿台一の天才とも)
  • 全共闘をしていなければ、ノーベル賞をとれただろうと周りからも言われたほど。(師は否定している)
  • 伝説の全共闘議長なので初めは恐れおののく学生もいるが、学生には基本的に優しい。
    • 意外にも遅刻には比較的寛容。他の生徒に迷惑をかけないように、とのことで、講習などで遅刻しても外で待たずに後ろの方で空いてる席にそっと座ればよいとおっしゃる。
      • 「遅刻するな!なんて自分の学生時代を思うと到底言えたものじゃない」
    • とはいうものの「遅刻は時間の損をする」とも。「自分が君らくらいの時、40歳や50歳になるとは思っていなかったからね。なるからね。30過ぎたらあっという間よ」
      「こんなとこ(予備校)居住環境悪いので何年もいるところじゃない。」とも。
  • ただ、あまり低レベルな質問はするべきではない。
    • 怒られたりはしないが、どんな質問でも親身になって答えてくれるというタイプでもない。
      • 生徒が自分で考えた方が生徒自身のためになるようことを質問した際には、わざと答えず、生徒が自分で考えるよう促してくださっているようにも思われる。
    • 講習の時は質問に関して「一晩考えて疑問点を明確にしてから来て欲しい」との発言を繰り返される。
    • 本人いわく「本来もっともよい授業は、生徒にやれっと言うだけで教えないことだ」とのこと。 自分でよく考えるのが大事だ、ということだろう。
    • 発想は大切にしてくれるが、根拠もない勝手な公式を作って「こういった式はないのですか?」と質問すると次の授業で「こういった根拠のない式を勝手に作らないように。」と公開処刑されることがある。師は公式を丸暗記する姿勢よりも公式が成立する根拠を重視するので、質問をするときは公式を考えた理由もきちんと用意すること。
  • レギュラーの連続講義で、延長した講義の次の講義も始業時間キッチリに教室に現れたため休み時間が極端に短くなり、学生たちが慌てて教室に戻るのを見て、「もう少しゆっくり来ればよかったな。でも、始業ベルが鳴ったのに講師室にいるのは居心地悪いんよ。長岡(亮)は堂々と残っとるけど。」とおっしゃっていた。
  • 師は最近、物理学の原書を読むためにラテン語の勉強を始めたらしい(武富師談)。
  • 大学に入学したら『ファインマン物理学』は原書で読んでほしいとおっしゃっていた。
    • また、大学入学するまでに1冊は洋書を読んでおくと、英語に対する億劫感がなくなるともおっしゃっていた。
  • 意外にも受験生時代は化学が苦手だったそうで、有機分野は暗記でかろうじて乗り切ったらしい。
  • かつて、パンフレットには世界史大岡俊明師、古文科秋本吉徳師とともに、長い間、顔写真を載せておらず、知名度の割に謎の存在だった。
    • 今では高卒生用の入学パンフレットに載っている。
  • 1992年度までパンフレットに写真を掲載していなかった。
  • 最終講では多くの人が師のサインをもらいに行くため、昼休みが全部列に並んだことで、つぶれることもある。それほどまでも多くのひとから尊敬される素晴らしい人物である。
  • 「君達が今やっている数学物理なんてのは、言っちゃ悪いがお子様ランチみたいなもん。ある程度の点数が取れるようになったら、英語をやりなさい。その方が将来必ず役に立つから。」
    • 師曰く、英語の勉強はどれだけやっても終わりはなく、また30歳までに身につけた言語は必ず一生身に残るとのこと。

参考文献 Edit

著書 Edit

 著作を持って講師室に行くと「僕は字が汚いんだよ」と言いながらサインをしてくれる。
もちろん駿台生の必需品『新・物理入門』でも問題ない。

 Wikipediaでは「駿台過去問題集「青本」では、東大の物理の入試問題について25年以上解説を書いた。」と記述されているが、坂間勇師との混同であろう。

学習参考書 Edit

一般書 Edit

  • 『知性の叛乱 東大解体まで』(前衛社、1969年)
  • 『リニア中央新幹線をめぐって 原発事故とコロナ・パンデミックから見直す』(みすず書房、2021年4月)

専門書 Edit

  • 『重力と力学的世界―古典としての古典力学』(現代数学社、1981年1月1日)

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*1 2023年度京大理系特化(演習強化)SE時間割より
*2 「東京新聞・こちら特報部」2014年10月13日
*3 「私の1960年代」より。また大学での講演会でも明言されている。